ナトリウムイオン・バッテリーとは?既存バッテリーとの違いとメリット・デメリット
鉛やリチウムイオンなどの既存バッテリーとは違った特徴がある「ナトリウムイオン電池。ポータブル電源やモバイルバッテリーでの利用時のメリット・デメリットを解説します。
公開日: 2025.3.24
ナトリウムイオン・バッテリーとは?
ナトリウムイオン・バッテリーは、正極にナトリウム化合物を、負極にハードカーボンなどの材料を用いた、二次電池(再充電可能な電池)です。構造的に従来のリチウムイオン・バッテリーと似ていますが、使う素材に違いがあります。
ナトリウムイオン・バッテリーのメリット
ナトリウムイオン電池採用製品の主なメリットは、
- 原材料が豊富である
- 対応動作温度が広い
- 寿命が長い
ナトリウムは海水や岩塩層に豊富に存在しており、リチウムに比べて容易に入手可能です。このため、ナトリウムイオン電池は資源の確保がしやすく、バッテリー製造時のコストの削減にも寄与すると期待されています。
また、動作環境温度が広いのもナトリウムイオン・バッテリーの大きなメリットの一つ。
リチウムイオン・バッテリーは氷点下では電圧が下がってしまう特性がありますが、ナトリウムイオン・バッテリーの放電可能温度は−35〜+50度とかなり広く、リチウムイオン電池と比べて電池内で発熱があっても熱暴走しにくく、発火リスクが抑えられます。
ポータブル電源やモバイルバッテリーは、アウトドアや車中泊など、一般的な住環境よりも過酷なシーンでの利用が多いため、対応動作温度が広いのは大きなメリットとなります。
充放電サイクルが多いのも大きなメリット。一般的な三元系のリチウムイオン・バッテリーは1,000回程度、リン酸鉄リチウムイオン・バッテリーは4,000回程度の充放電サイクルが可能ですが、ナトリウムイオン・バッテリーは5,000回以上の充放電サイクルが可能とされています。これにより、長期間にわたって安定した性能を維持できると期待されています。
ナトリウムイオン・バッテリーのデメリット
一方で、ナトリウムイオン・バッテリー採用製品にはデメリットもあります。
- エネルギー密度が低い = 大きく・重くなる
- まだ値段が高い
ポータブル電源での採用と考えると大きいのが重量・サイズ面。近年のポータブル電源は「小型化、軽量化」が進んでいますが、現行のナトリウムイオン・バッテリーはエネルギー密度がリチウムイオン・バッテリーよりも低いため、バッテリー自体が大きく、重くなります。ポータブル電源では本体のサイズ・重量のほとんどはバッテリーですから、ここはデメリットになるでしょう。
値段面でも、まだ出始めのナトリウムイオン・バッテリーは価格が高く、製造原価が安くできたとしてもリチウムイオンよりも高価です。この辺りは今度どれくらい普及するかによって変わってくるでしょう。
ポータブル電源は年々低価格化をしているため、コストがどれくらい下がるかで、ポータブル電源にナトリウムイオン・バッテリーが採用されるかどうかが決まるでしょう。
ポータブル電源・モバイルバッテリーに採用されるとどうなる?
より長寿命なポータブル電源になる
ナトリウムイオン・バッテリーは、充放電サイクルが5,000回以上と長寿命であるため、ポータブル電源やモバイルバッテリーの寿命が延びることが期待されます。これにより、長期間にわたって安定した性能を維持できるようになります。
特に、ポータブル電源は車中泊などの電源、もしくは防災時の電源としての用途を考えるとバッテリーサイクルが多いのは非常に重要。バッテリーサイクルが5,000回以上となると、ほとんど寿命を気にしないで使えるようになるでしょう。
様々な環境で使えるようになる
現在のポータブル電源は、リチウムイオン・バッテリーを使用しているため、氷点下での使用が難しい製品が多いですが、ナトリウムイオン・バッテリーを採用することで、−35度でも使用できるようになります。このため、冬のキャンプや車中泊でも安心して使用できるようになるでしょう。
市場が拡大すれば低価格化に寄与する可能性も
ナトリウムイオン・バッテリーは、リチウムイオン・バッテリーよりも原材料が豊富であるため、普及が進めば価格が下がる可能性があります。ナトリウムイオン・バッテリーが一般的になり、広く普及するようになれば、ナトリウムイオン・バッテリーの価格が下がり、採用するポータブル電源やモバイルバッテリーの値段も下がる可能性があります。